＜ACCI Gusto 2021 日髙良実シェフ デモンストレーション＞
動画は料理の醍醐味を伝えるのにぴったりな方法
独特の手ごたえや便利さ、楽しさを味わって

最近、YouTubeなどの動画を通して調理技術やコツを伝える料理人が増えていますが、その中で、日髙シェフはいち早く動画に着手した先駆者的存在。そんなシェフによるYouTubeのススメ。メッセージを発信するうえでのポイントを押さえつつ、デモンストレーションを展開してくれました。

日髙良実さん
1986年に渡伊し、「エノテカ・ピンキオーリ」などの名店で修業。90年、西麻布に「リストランテ アクアパッツァ」を開店し、2018年には青山に新生「リストランテ アクアパッツァ」オープンした。20年、YouTubeチャンネル「日高良実のACQUAPAZZAチャンネル」を開設。

日髙シェフといえば、日本のイタリア料理界を代表するシェフ。これまで、雑誌やテレビなど、さまざまなメディアを通じて、料理に関する情報を発信してきましたが、そんなシェフは動画に関する感想をこう語ります。
「YouTubeは、発信する側も受け取る側にとっても、もっとも便利な方法と言えるのではないでしょうか。
たとえば料理本もいいのですが、読み手によって解釈が異なることもあります。一方、テレビの場合は、情報伝達の目的やそれを受け取る対象が広すぎる面もあります。その点YouTubeは、ある程度視聴者を絞り、その対象者の目的に合った情報を流すことができます」
しかし、自ら「超アナログ人間」を称する日髙シェフ。最初は手探り状態だったと振り返ります。継続するうちに視聴者の姿が見えてきて、それによると、料理の動画を好んで利用しているのはほとんどが料理初心者の男性ということです。彼らはYouTubeの「必要な部分を繰り返し視聴して、ほしい情報を確実にゲットできる」という点が気に入っているようです。そこで日髙シェフは、できるだけ簡単に手に入る食材や調味料を使い、少ない工程ながらプロっぽく仕上がるメニュー紹介を心掛けています。特に再生回数の多かった料理に、アサリの洗い方から説明したボンゴレビアンコや、切り身魚でできるアクアパッツアなどが挙げられるということです。

今回の「南イタリア風トマトソースのペスカトーラ」でも、調理の簡単なシーフードミックスを使っています。
「冷凍技術の進化によって、最近は冷凍ものでもかなりおいしくできます。下処理いらずで、凍ったまま使える点も便利ですし、もしにおいが気になるようでしたら、ニンニクやオリーブオイルをプラスすることでカバーできます」
こうしたちょっとした工夫や「トマトソースがはねるので注意して」といった小さなアドバイスが、意外と視聴者にウケるとか。

「動画を参考にするうちに、実際に私の料理を味わってみたいとか、オリジナル版の料理を知りたいという興味から、うちのレストランを訪れる新規のお客様が増えました」
また、日髙シェフファンの夫を驚かせようと、妻が記念日のディナーを予約する夫婦やカップルも少なくないそうです。
「発信しているうちに、調理技術だけでなく、料理に合うワインについても伝えたい、熱心な生産者も紹介したい――と構想が広がる。これからも自由にいろいろなことを発信していければと思います」
アナログ人間だからと尻込みせずにチャレンジしてみよう。これこそ日髙シェフが一番に伝えたかったこと。そんな日髙シェフの頭の中には、まだまだたくさんのアイディアが詰まっているようです。